高額療養費が2026年8月に変わる|いまの上限額と、知っておきたい合算・多数回のルール
入院や手術で医療費が高額になったとき、負担を一定額までに抑えてくれるのが高額療養費制度です。この制度が2026年8月から見直される予定となっています。
2025年にいったん見直しが見送られた経緯もあり、情報が錯綜しやすいテーマです。この記事では、公的機関の情報をもとにいまの上限額とこれからの予定、そして意外と知られていない合算・多数回のルールを整理します。
💡 この記事の要点
・2026年7月診療分までは現行の上限額が適用されます
・2026年8月診療分から月上限が引き上げ(例:28万〜50万円区分 80,100円→85,800円+1%部分)、年間上限(毎年8月〜翌7月)が新設されます
・世帯合算や多数回該当を知らないと、戻るはずのお金を取り逃がします
1. いまの上限額(2026年7月診療分まで)
70歳未満の場合、1か月あたりの自己負担上限は所得区分によって次のようになっています(カッコ内は多数回該当時の上限)。
| 標準報酬月額 | ひと月の上限額 |
|---|---|
| 83万円以上 | 252,600円+(総医療費-842,000円)×1%(140,100円) |
| 53万〜79万円 | 167,400円+(総医療費-558,000円)×1%(93,000円) |
| 28万〜50万円 | 80,100円+(総医療費-267,000円)×1%(44,400円) |
| 26万円以下 | 57,600円(44,400円) |
| 住民税非課税など | 35,400円(24,600円) |
2. 「見送られた」のか「変わる」のか
ここは誤解されやすい部分です。経緯を整理すると次のようになります。
- 2025年3月:当初予定されていた見直しは、患者団体などからの意見を受け、最終的に実施が見送られました
- 2026年5月:再検討をふまえた改正法が成立しました
- 2026年7月24日:関連政令の改正が閣議決定され、予定どおり8月診療分から実施される見通しです
- 2027年8月:所得区分の細分化が施行予定です
つまり「見直しは白紙になった」わけではなく、いままさに施行直前の段階です。
3. ⚡ 2026年8月からの新しい上限額
8月診療分からは、月ごとの自己負担上限額の引き上げと年間上限の新設が行われます。70歳未満の新しい月上限は次のとおりです。
| 標準報酬月額 | 〜2026年7月 | 2026年8月〜 |
|---|---|---|
| 83万円以上 | 252,600円+(医療費−842,000円)×1% | 270,300円+(医療費−901,000円)×1% |
| 53万〜79万円 | 167,400円+(医療費−558,000円)×1% | 179,100円+(医療費−597,000円)×1% |
| 28万〜50万円 | 80,100円+(医療費−267,000円)×1% | 85,800円+(医療費−286,000円)×1% |
| 26万円以下 | 57,600円 | 61,500円 |
| 住民税非課税 | 35,400円 | 36,900円 |
多数回該当の金額は、2026年8月の段階では現行のまま据え置かれます。
一方で新設される年間上限は、複数月にわたって負担が続く世帯のための仕組みです。ここでいう「1年間」は暦の1〜12月ではなく、毎年8月から翌年7月までの期間です。70歳未満の年間上限は所得区分に応じて168万円・111万円・53万円(2区分)・29万円で、年収約200万円未満の課税世帯には確認のうえ41万円が適用される経過措置もあります。
月の上限は上がるものの、長期にわたり治療が続く場合は年間上限で負担が頭打ちになる——という「上げと下げが混ざった」改定である点が、この見直しの正確な姿です。
4. 窓口で上限までしか払わない方法
あとから払い戻しを受けるのではなく、窓口負担を最初から上限額までにすることができます。次の条件を満たす場合です。
- 健康保険証利用登録を済ませたマイナ保険証を使う
- その医療機関・薬局がオンライン資格確認を導入している
- 保険者にマイナンバー情報が正しく登録されている
オンライン確認に対応していない医療機関や、マイナンバーが未登録の場合は、事前に限度額適用認定証を申請して提示する必要があります。なお協会けんぽでは、低所得者に該当する場合、マイナ保険証を利用するときも「限度額適用・標準負担額減額認定証」の申請が必要です。
5. 見落としやすい2つのルール
📝 世帯合算
同じ月に、同じ医療保険に加入している世帯員の自己負担を合算できます。ただし70歳未満は、個人ごと・医療機関ごと(医科/歯科、入院/外来の区分)に21,000円以上の分だけが合算対象です。70歳以上は対象となる自己負担をすべて合算します。
📝 多数回該当
診療月以前の直近12か月に高額療養費の対象月が3か月以上あると、4回目の該当月から低い上限額が適用されます。限度額適用認定証で窓口負担が上限までだった月も、この回数に含まれます。
この2つを知らないと、本来受け取れるはずの給付を取り逃がすことがあります。
6. 医療費控除との関係
高額療養費は健康保険の給付、医療費控除は確定申告で受ける所得控除です。両方を利用すること自体はできますが、注意点があります。
医療費控除を計算するときは、高額療養費で補てんされた金額を、その対象となった医療費から差し引く必要があります。ただし「関連する医療費が全額対象外になる」わけではなく、実際に負担した額から補てん分を引いた残りが計算対象です。補てん額がその医療費を上回っても、超過分を他の病気の医療費から引く必要はありません。
7. セルフメディケーション税制も確認を
市販薬の購入費が対象になるセルフメディケーション税制は、一定の健診・予防接種などの要件を満たす方が、対象医薬品の購入費のうち12,000円を超える部分を最大88,000円まで控除できる制度です。現行の適用は2026年12月31日までですが、2027年以降も存続することが法制化されています(スイッチOTC部分は適用期限を廃止し常設化、その他は5年延長のうえ対象範囲を調整)。
なお通常の医療費控除とはどちらか一方の選択で、同時には受けられません。
8. 働けない期間の傷病手当金
入院などで働けない期間が続く場合、健康保険から傷病手当金が支給される場合があります(協会けんぽの場合、次をすべて満たすこと)。
- 業務外の事由による病気・けがの療養であること
- 仕事に就くことができない状態であること
- 連続する3日間の待期を含み、4日以上仕事に就けなかったこと
- 休業期間に給与の支払いがないこと
⚠️ 注意
制度は改正が予定されており、施行時期・金額は変更される場合があります。この記事は2026年7月時点の公的機関の公表情報にもとづく整理です。ご自身のケースは加入している健康保険の保険者にご確認ください。
まとめ
- 現行の上限額は2026年7月診療分まで。8月から月上限の引き上げ+年間上限(8月〜翌7月)の新設
- マイナ保険証+オンライン資格確認なら窓口で上限額までで済む場合がある
- 世帯合算(70歳未満は21,000円以上が対象)と多数回該当(直近12か月に3回で4回目から軽減)を忘れずに
- 医療費控除は補てん分を差し引いて計算する
医療費の心配は、制度を知っているかどうかで大きく変わります。いざというときに慌てないよう、上限額と申請方法だけでも把握しておきましょう。
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