韓国で払った治療費、帰国後に健康保険へ請求できます|時効は支払った日の翌日から2年、様式には韓国語版があります

韓国の病院にかかると、窓口では自分で全額を払うことになります。その場では「旅行中の出費」として飲み込むしかない、と思われがちです。ただ、帰国してから日本の健康保険に請求できる道が用意されています。海外療養費という給付です。気になるのは「本当に戻るのか、いくら戻るのか」、そして「韓国の病院に日本の書類なんて書いてもらえるのか」だと思います。
結論から言うと、要件を満たせば申請により一部医療費の払い戻しを受けられます。そして期限があります。協会けんぽの記載では、海外で治療費の支払いをした翌日から2年を経過すると、時効により申請できなくなります。動くべき数字はこの2年です。
1. どんなときに対象になり、どんなときに外れるのか
協会けんぽは、海外療養費を「海外旅行中や海外赴任中に急な病気やけがなどによりやむを得ず現地の医療機関で診療等を受けた場合、申請により一部医療費の払い戻しを受けられる制度」と説明しています。旅行中に熱を出した、転んで縫った、といった場面が想定されています。
ただし、対象になるには次の2つを両方満たす必要があります。
- 日本国内で保険診療として認められている医療行為であること。美容整形やインプラントなど、日本国内で保険適用となっていない医療行為や薬が使われた場合は給付の対象になりません
- 療養(治療)を目的で海外へ渡航し診療を受けた場合でないこと。治療のために渡航した場合は対象外で、日本で実施できない診療を行った場合であっても保険給付の対象にはなりません
ここは韓国旅行と相性の悪い部分でもあります。美容目的の施術を受けに行く渡航は、この制度の想定から外れます。逆に、旅程の途中で体調を崩して現地の医院にかかった、という順番であれば要件の側に立ちます。
2. 戻る額は「韓国で払った額」ではなく「日本の基準」で計算されます
ここが最大の誤解ポイントです。支払った領収書の金額がそのまま戻るわけではありません。協会けんぽの説明はこうです。日本国内の医療機関等で同じ傷病を治療した場合にかかる治療費を基準に計算した額(実際に海外で支払った額の方が低いときはその額)から、自己負担相当額(患者負担分)を差し引いた額を支給します。
つまり物差しは日本側にあります。さらに協会けんぽ自身が、次の注意を明記しています。日本と海外での医療体制や治療方法等が異なるため、海外で支払った総額から自己負担相当額を差し引いた額よりも、支給金額が大幅に少なくなることがあります。
外貨で払った分の換算にもルールがあります。支給決定日の外国為替換算率(売レート)を用いて円に換算して支給金額を算出します。ウォンで払った日のレートではありません。
海外で払った額の方が低いときは、その低い方の額が基準になります。少額の診察であれば、そもそも戻る余地が小さいということです。金額の期待値は控えめに置いたうえで、それでも書類は残しておく、という順番が現実的です。
3. 韓国の病院で書いてもらう用紙には、韓国語版があります
「日本の様式を韓国の医師に渡しても書いてもらえないのでは」という不安は、ここで解けます。協会けんぽは診療内容明細書などの様式について、英語・韓国語・中国語・タイ語・ベトナム語・スペイン語・ポルトガル語のPDFを用意しています(歯科の様式Cは英語・韓国語・中国語・スペイン語・ポルトガル語)。韓国語版があるので、現地の医療機関にそのまま差し出せます。
用紙は3種類あります。
- 様式A:診療内容明細書(医科の場合)。歯科にかかったときは様式C:歯科診療内容明細書
- 様式B:領収明細書
- これらとは別に診療に要した費用を証明した領収書の原本
記入のルールも決まっています。被保険者、受診者等による記入はできません。担当医に記入・署名を依頼してくださいとされており、自分で埋めることはできません。さらに1ヶ月ごと、受診者ごと、医療機関ごと、入院・外来ごとに1枚ずつ、それぞれの医療機関での証明が必要です。2つの病院にかかったなら2セット要る、ということです。
証明内容についても、様式Aの傷病名や疾病分類番号、様式Bの通貨単位は、必ず記載してくださいと念を押されています。通貨単位が抜けていると、ウォンなのか円なのかが読み取れず審査が止まります。現地を離れてしまうと書き足しは困難なので、受け取った場でここだけは目を通しておく価値があります。
4. 帰国後に用意するもの — 抜けやすいのは6番と7番です
申請時に必要な書類は次のとおりです。
- 海外療養費支給申請書
- 様式A(歯科は様式C)と様式B
- 領収書原本およびその日本語訳
- 様式AまたはCおよびBの日本語訳。翻訳文には、翻訳者が署名し、住所および電話番号を明記する必要があります
- 受診者の海外渡航期間が確認できる書類。パスポートのコピー(氏名・顔写真のページと、当該期間の出入国スタンプのページ)/査証のコピー/航空チケットのコピー(eチケット控えを含む)のいずれか
- 同意書。診療内容について医療機関へ照会する場合があるため必要です
- ケガによる申請なら負傷原因届、第三者が関係する場合は第三者行為による傷病届 など
協会けんぽは、受診者の海外渡航期間が確認できる書類、同意書は申請の都度、提出が必要です。添付もれが多いためご注意くださいと明記しています。2回目以降の申請でも省略できません。
日本語訳は、専門業者でなければならないとは書かれていませんが、翻訳者の署名・住所・電話番号が要件です。家族に頼む場合もこの3点を書いてもらう必要があります。なお、同様の項目・内容が記載されていれば独自に作成した様式を使っても差し支えないとされていますが、その場合も日本語訳の添付は必要です。
5. 提出先は全国どこでも「神奈川支部」に集約されます
意外に知られていないのがこの点です。海外療養費の提出先は、〒220-8538 横浜市西区みなとみらい4-6-2 みなとみらいグランドセントラルタワー9階 協会けんぽ 神奈川支部 海外療養費グループです。ただし各支部に提出されても、神奈川支部に回送されますので、地元の支部に出しても手続は進みます。電子申請も利用できます。
審査には時間がかかります。通常、数か月とされており、被保険者や医療機関等へ照会が入ることもあります。また、海外への直接送金はできません。海外に滞在したまま申請する場合は、事業主または日本在住の家族に受け取りを委任し、療養費支給申請書の受取代理人欄に記入します。
なお、ここまでは協会けんぽ(全国健康保険協会)の取扱いです。市区町村の国民健康保険や、勤務先の健康保険組合に加入している場合は、窓口も様式も異なります。自分の保険証・資格情報に書かれた保険者を確認して、そちらの案内に従ってください。
6. 現地でやるべきことは、実は2つだけです
制度の説明は長くなりましたが、旅先で必要な動きは絞られます。
- 領収書を必ずもらって保管する。原本が要ります
- 様式A・様式Bを、その場で医師に記入・署名してもらう。韓国語版のPDFを事前に印刷して持参できれば理想的です
とはいえ、急な発熱で駆け込んだ病院に日本の様式を出す余裕がないこともあります。その場合でも、まず領収書だけは確保してください。様式は帰国後に郵送でやり取りする余地が残りますが、領収書の原本は現地でしか手に入りません。
そして、期限だけは動かせません。海外で治療費の支払いをした翌日から2年です。旅行のことを忘れかけた頃に気づいて間に合わなかった、という結末を避けるには、帰国した週に領収書を一か所へ入れておくのが手堅いやり方です。
7. 海外旅行保険とはどう使い分けるか
この制度は、海外旅行保険やクレジットカード付帯の保険と競合するものではありません。役割が違います。
海外療養費は、日本の公的健康保険から日本の基準で計算した額の一部が後から戻る仕組みです。協会けんぽ自身が「支給金額が大幅に少なくなることがある」と書いているとおり、実費を埋める設計ではありません。一方、旅行保険の治療費用補償は現地の実費に対応する商品設計です。高額になりやすい入院や搬送を想定するなら、そちらの検討が先に来ます。
そのうえで、旅行保険を使った場合に海外療養費をどう扱うかは、加入している保険の補償内容と保険者の判断が関わります。二重に受け取る形にならないよう、申請前に保険者へ確認してください。
出典と確認時点
この記事は2026年8月4日時点で、全国健康保険協会(協会けんぽ)「海外療養費」の公表内容を確認して整理した一般的な内容です。給付の可否・支給額・必要書類の個別判断は、ご自身が加入する保険者(協会けんぽ各支部、健康保険組合、市区町村の国民健康保険)にご確認ください。
要点の確認
- 海外療養費はやむを得ず現地の医療機関で診療等を受けた場合に、申請により一部医療費の払い戻しを受けられる制度
- 対象は日本国内で保険診療として認められている医療行為で、かつ治療目的の渡航でないこと
- 支給額は日本国内で同じ傷病を治療した場合の費用を基準に計算した額から自己負担相当額を差し引いた額
- 様式A・様式B・様式Cには韓国語版のPDFがあり、記入・署名は担当医が行う
- 1ヶ月ごと・受診者ごと・医療機関ごと・入院/外来ごとに1枚ずつ証明が必要
- 翻訳文には翻訳者の署名・住所・電話番号を明記
- 提出先は協会けんぽ神奈川支部 海外療養費グループ(各支部提出でも回送される)。審査は通常数か月
- 治療費を支払った翌日から2年を過ぎると時効で申請できなくなる
連休に韓国へ行く予定があるなら、様式A・様式Bの韓国語版を1枚ずつ印刷して、パスポートケースに入れておくだけで準備は終わります。使わずに済めばそれが一番です。
様式の言語ラインアップや提出先は今後変更されることがあります。変更が公表され次第、本記事の記載を更新します。
あわせて読みたい
・韓国で病院・薬局にかかるなら1330(日本語・24時間)|受診は原則自己負担、領収書と診断書を
・韓国旅行に海外旅行保険は必要?カード付帯だけで足りるかは治療費が全額自己負担な点から判断を
・韓国旅行のトラブル対処ガイド|緊急連絡先・病院・パスポート紛失時の動き方【2026年】
コメント
コメントを投稿