介護施設の部屋代には上限額があります|世帯全員が住民税非課税で、ユニット型個室なら日額880円。ただし預貯金が650万円を超えると外れます

親が施設に入るとなったとき、介護サービスの費用よりも読めないのが部屋代と食事代です。「低所得なら安くなる制度がある」と聞いても、うちが対象なのか、いくらになるのかが分からないまま話が進んでしまう。そこが一番引っかかるところだと思います。
厚生労働省が出している周知用のリーフレットには、対象と金額が段階別に示されています。原則、世帯全員(世帯を分離している配偶者を含む)が市町村民税非課税の方が対象で、居住費には利用者負担の段階ごとに負担限度額(日額)が定められています。たとえばユニット型個室で第2段階なら日額880円です。ただし判定には預貯金額の要件もあり、第2段階は650万円(夫婦の場合1,650万円)以下とされています。
1. 何に対する補助なのか——施設の「食費・居住費」です
リーフレットの説明はこうです。介護保険施設(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院)やショートステイを利用する方の食費・居住費については、低所得の方への補助(補足給付)を行っています。
ここで押さえておきたいのは対象の範囲です。介護サービスそのものの費用ではなく、食事代と部屋代が対象です。そしてショートステイも含まれると書かれています。在宅で介護しながら、月に数日だけ預けるという使い方でも関係してくるということです。
医療費のほうには高額療養費という別の仕組みがありますが、そちらは医療機関で支払う医療費が対象で、施設の部屋代や食事代とは別の制度です。両者を混同すると、「上限があるはずなのに請求が高い」という食い違いが起きます。
2. 対象は「世帯全員が市町村民税非課税」。別世帯の配偶者も見られます
対象者の条件として、リーフレットには補足給付は、原則、世帯全員(世帯を分離している配偶者を含む)が市町村民税非課税の方が対象ですと書かれています。
この括弧の中が実務では効きます。世帯を分けていても、配偶者は世帯を分離していても判定に含まれるという書き方になっています。世帯分離をすれば対象になる、という単純な話ではないということです。
加えて、リーフレットには社会福祉法人等による利用者負担軽減制度事業も対象となる場合がありますという注記があり、同時に事業を実施していない社会福祉法人等もありますとも書かれています。施設によって使える仕組みが違う、という含みです。
3. 段階は4つ。分かれ目は「年金収入+合計所得金額」と「預貯金額」です
リーフレットの表には、利用者負担段階が4区分で示されています。金額はいずれも単身の場合/カッコ内は夫婦の場合の預貯金額です。
第1段階:生活保護受給者は預貯金の要件なし。世帯全員が市町村民税非課税である老齢福祉年金受給者は1,000万円(2,000万円)以下。
第2段階:世帯全員が市町村民税非課税で、年金収入金額(非課税年金を含む)+合計所得金額が80万円以下。預貯金は650万円(1,650万円)以下。
第3段階①:同じく非課税世帯で、80万円超〜120万円以下。預貯金は550万円(1,550万円)以下。
第3段階②:同じく非課税世帯で、120万円超。預貯金は500万円(1,500万円)以下。
見落としやすいのは、収入の判定に非課税年金が含まれる点と、段階が上がるほど預貯金の上限がむしろ下がる点です。第2段階の650万円に対して第3段階②は500万円で、収入が多い区分ほど預貯金の許容額は小さくなっています。
4. 部屋のタイプで金額が変わります
負担限度額は、部屋のタイプと施設の種類でも分かれます。リーフレットに令和6年8月からの額として示されているのは次のとおりです(いずれも日額)。
多床室(特養等・老健、医療院等とも):第1段階0円/第2段階430円/第3段階①②430円
従来型個室(特養等):第1段階380円/第2段階480円/第3段階①②880円
従来型個室(老健、医療院等):第1段階550円/第2段階550円/第3段階①②1,370円
ユニット型個室的多床室:第1段階550円/第2段階550円/第3段階①②1,370円
ユニット型個室:第1段階880円/第2段階880円/第3段階①②1,370円
同じ第2段階でも、多床室の430円とユニット型個室の880円では倍の開きがあります。個室を希望するかどうかが、そのまま毎日の負担額の差になります。日額なので、実際の請求は日額×利用した日数という形で効いてきます。月額に換算した金額はリーフレットに記載がないため、ここでは掛け算した数字は示しません。
5. 令和6年8月に60円上がりました。据え置かれた区分もあります
リーフレットの主題は改定です。近年の高齢者世帯の光熱・水道費などや、在宅で生活する方との公平性等を総合的に勘案し、令和6年8月から、居住費の負担限度額が60円(日額)引き上がりますと書かれています。
ただし全区分ではありません。従来から負担限度額を0円としている利用者負担第1段階の多床室利用者については、負担限度額を据え置き、利用者負担が増えないようにしますとされています。表でも第1段階の多床室は0円から0円のままです。
あわせて、居住費に要する平均的な費用の額(基準費用額)についても、60円(日額)引き上がりますと記載されています。補助の上限だけでなく、基準となる費用の側も同じ幅で動いた、という改定でした。
なお、このリーフレットは令和6年8月の改定を周知するものです。その後さらに改定があったかどうかは、この資料からは分かりません。実際の金額は、お住まいの市区町村や利用予定の施設の案内で確認してください。
6. 対象から外れると、上限そのものが無くなります
ここが損失の大きさを決める部分です。リーフレットには補足給付の対象ではない方について、ご負担いただく額は、施設と利用者の契約により決められていますと書かれています。
つまり、対象になるかどうかは「安くなるかどうか」ではなく、公的に定められた上限額が適用されるか、施設との契約で決まる額になるかという違いです。世帯の課税状況が変わったり、預貯金が区切りの金額を超えたりすると、日額の上限という枠組みそのものが外れます。
逆に言えば、確認すべきことは多くありません。世帯全員(別世帯の配偶者を含む)が市町村民税非課税かどうか、そして預貯金額が段階ごとの金額以下かどうか。この2つで、対象になりうるかの見当がつきます。
申請の手続き、必要な書類、認定の有効期間や更新の時期については、このリーフレットに記載がありません。手続きの流れは市区町村ごとの運用になりますので、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口にご確認ください。
健康保険の側にも、自分から請求しないと受け取れない給付があります。出産育児一時金の差額請求は出産日の翌日から2年以内
7. 食費については、この資料では金額が示されていません
冒頭の説明にあるとおり、補足給付の対象は食費・居住費の両方です。ただしこのリーフレットは居住費の改定を周知するもので、食費の段階別の日額は示されていません。したがって食費がいくらになるのかを、この資料から答えることはできません。
施設の費用を見積もるときは、介護サービスの自己負担、居住費、食費、そして日用品などのその他の費用が別立てで積み上がります。上限が効くのは居住費と食費の部分だけで、それ以外は別の話になります。見積書を受け取ったら、どの費目が補足給付の対象で、どれが対象外かを施設に確認するのが早道です。
働きながら介護をしている方は、介護休業給付で賃金の67%が出る仕組みと、社会保険料が9月分から変わる仕組みも併せて確認しておくと、家計全体の見通しが立てやすくなります。
出典と確認時点
この記事は2026年8月5日時点で、厚生労働省の周知用リーフレット「介護保険施設等における居住費の負担限度額が令和6年8月1日から変わります」の内容を確認して整理した一般的な内容です。記載の額は同リーフレットに令和6年8月からの額として示されたものであり、その後の改定の有無は同資料からは分かりません。食費の負担限度額、申請手続き、認定の有効期間については同資料に記載がありません。実際の適用と手続きは、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口および利用する施設にご確認ください。
要点の確認
- 補助(補足給付)の対象は介護保険施設とショートステイの食費・居住費
- 原則、世帯全員(世帯を分離している配偶者を含む)が市町村民税非課税の方が対象
- 預貯金額の上限は第1段階1,000万円/第2段階650万円/第3段階①550万円/第3段階②500万円(カッコ内は夫婦でそれぞれ2,000万円・1,650万円・1,550万円・1,500万円)
- 居住費の負担限度額(日額)は多床室430円/従来型個室380〜1,370円/ユニット型個室880〜1,370円と段階と部屋タイプで分かれる
- 令和6年8月から60円(日額)引き上げ。ただし第1段階の多床室は0円のまま据え置き
- 基準費用額も60円(日額)引き上げ
- 対象でない方の負担額は、施設と利用者の契約により決められる
- 食費の金額・申請手続き・有効期間はこのリーフレットに示されていません
世帯の課税状況と預貯金額。この2つを確認するだけで、上限額が使える立場かどうかの見当がつきます。
負担限度額と基準費用額は改定されることがあります。厚生労働省の資料に更新があり次第、本記事の金額を更新します。施設の見積もりを受け取る前に、もう一度ここで段階と日額を確かめてください。
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