社会保険料は9月分から変わります|決めたのは4〜6月の給与、翌月控除の会社なら10月の給与明細に出ます

秋になると給与明細の「健康保険」「厚生年金保険」の欄が動くことがあります。昇給していないのに引かれる額だけ増えていると、何が起きたのか分からないまま手取りが減ります。まず気になるのは「それはいつの給料からなのか」だと思います。
答えは9月分の保険料からです。多くの事業所は前月分の保険料を当月の給与から控除する翌月控除を採っているため、その場合は10月に支給される給与の明細で額が変わります。そして新しい額を決めたのは4月・5月・6月に支払われた給与です。この仕組みを定時決定といい、決まった標準報酬月額は9月から翌年8月まで使われます。
この記事の要点
・定時決定は4月・5月・6月に支払われた報酬の平均で標準報酬月額を決め直す仕組み
・新しい標準報酬月額の適用は9月から翌年8月まで
・翌月控除の事業所なら、給与明細に出るのは10月支給分から
・対象月は支払基礎日数17日以上(特定適用事業所の短時間労働者は11日以上)
・報酬には残業手当・通勤手当・住宅手当・家族手当が入り、年4回以上支給される賞与も含まれます
・厚生年金保険料率は18.3%で固定、事業主と本人が半分ずつ負担
1. 9月分から変わる——給与明細に出るのは翌月控除なら10月支給分
健康保険と厚生年金保険の保険料は、標準報酬月額という区分された額に保険料率を掛けて計算します。この標準報酬月額を毎年1回決め直すのが定時決定です。
事業主は7月1日現在で使用しているすべての被保険者について、4月・5月・6月に支払われた報酬を「算定基礎届」で届け出ます。提出期限は毎年7月10日まで(10日が土曜または日曜の場合は翌営業日)。この届出をもとに決め直された標準報酬月額が、9月から翌年8月までの各月に適用されます。
ここで多くの方がずれるのが、「9月分」と「9月の給与」が同じではないという点です。保険料の控除タイミングは法令で一律に決まっているわけではなく、事業所の取扱いによります。前月分を当月の給与から差し引く翌月控除を採っている事業所であれば、9月分の保険料が反映されるのは10月に支給される給与です。当月控除の事業所なら9月支給分から動きます。自分の会社がどちらかは、給与規程か経理・人事に確認するのが早道です。
2. なぜ4〜6月なのか——残業代も通勤手当も入ります
定時決定で見るのは、4月・5月・6月に受けた報酬の総額をその期間の総月数で割った額です。ここでいう報酬は基本給だけではありません。
- 能率給、奨励給、役付手当、職階手当、特別勤務手当、勤務地手当、物価手当
- 日直手当、宿直手当、家族手当、休職手当、通勤手当、住宅手当、別居手当
- 早出残業手当、継続支給する見舞金等
- 事業所が提供する宿舎費や食事代等の現物給与
- 年4回以上支給される賞与(年3回以下の賞与は標準賞与額として別に扱われます)
つまり、4月から6月に繁忙期が重なって残業が増えると、その分が9月からの1年間の保険料に乗ります。逆に、この3か月だけ残業が少なかった方は、実際の年収より低い区分で1年間過ごすことになります。4〜6月の残業が、その年の9月から翌年8月までの12か月分の保険料を左右する——これが「4〜6月は残業を抑えたほうがよい」と言われる理由です。
ただし保険料が下がることは、将来の厚生年金の額や、傷病手当金・出産手当金といった標準報酬月額を基準に計算される給付が下がることとも表裏です。手取りだけを見て判断すると、あとで受け取る側が薄くなります。
3. 「支払基礎日数17日」に届かない月は使いません
4〜6月の3か月すべてを機械的に平均するわけではありません。算定に使うのは支払基礎日数が17日以上ある月だけです(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日以上)。支払基礎日数とは給与計算の対象となる日数で、日給制や時給制なら出勤日数、月給制や週給制なら暦日数で数えます。
パートやアルバイトなど短時間就労者については、別の順序が定められています。
- 4〜6月のうち支払基礎日数が17日以上の月が1か月以上ある場合 → その該当月の報酬総額の平均で決定
- 3か月とも17日未満の場合 → 15日以上17日未満の月の報酬総額の平均で決定
- 3か月とも15日未満の場合 → 従前の標準報酬月額のまま引き続き定時決定
4月にまとまった欠勤があった方や、月の途中で入社した方は、その月が算定から外れて残りの月だけで平均される場合があります。明細の額が想定と違うときは、まずこの日数を数え直すところからです。
4. 算定基礎届が出ない人もいます
7月1日現在のすべての被保険者と70歳以上被用者が提出対象ですが、次のいずれかに当たる方は算定基礎届の提出が不要とされています。
- 6月1日以降に資格取得した方(=6月以降に入社した方)
- 6月30日以前に退職した方
- 7月改定の月額変更届を提出する方
- 8月または9月に随時改定が予定されている旨の申し出を行った方
6月以降に入社した方は、入社時に決まった標準報酬月額がそのまま続きます。資格取得時の決定は、資格取得月からその年の8月まで(6月1日から12月31日までに資格取得した方は翌年の8月まで)適用される決まりです。「入社直後の9月に保険料が変わらない」のはこのためで、異常ではありません。
5. 途中で変わることもあります——随時改定と育休明けの改定
定時決定で決めた額は原則1年据え置きですが、途中で改定される道が用意されています。
ひとつが随時改定(月額変更届)です。次の3つをすべて満たしたときに行われます。
- 昇給・降給などにより固定的賃金に変動があった(基本給、日給や時間給の単価、住宅手当・役付手当などの固定的な手当の追加や変更を含む)
- 変動月以後引き続く3か月の報酬の平均額から算出した標準報酬月額と、従前の標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた
- その3か月とも支払基礎日数が17日以上(特定適用事業所の短時間労働者は11日以上)
該当すると、変更後の報酬を初めて受けた月から起算して4か月目の標準報酬月額から改定されます。4月に支払われる給与に変動があったなら7月からです。6月までに随時改定されたものは当年8月まで、7月以降に改定されたものは翌年8月まで適用されます。なお、標準報酬月額の上限または下限にわたる等級変更の場合は、1等級差でも随時改定の対象になります。
注意したいのは、逆パターンでは動かないことです。固定的賃金は上がったのに残業手当等が減って平均が下がり2等級以上の差が出たケース、固定的賃金は下がったのに非固定的賃金が増えて上がったケースは、いずれも随時改定の対象外とされています。「基本給が下がったのに保険料が下がらない」という事態はここから起きます。
もうひとつが育児休業等終了時の改定です。育休等が終わって時短勤務になり給与が下がった場合、本人からの届出によって、育休等終了日の翌日が属する月以後3か月間に受けた報酬の平均額をもとに、その翌月から標準報酬月額が改定されます。2等級差を待つ必要がありません。届出をしないと下がらないので、復職時に人事へ申し出るところが分かれ目です。
6. 保険料率のほうは動きません
標準報酬月額が上下する一方で、厚生年金保険料率は動きません。段階的な引上げは平成29年9月を最後に終了し、以後18.3%で固定されています。この18.3%を事業主と被保険者が半分ずつ負担するので、本人負担は9.15%相当です。
標準報酬月額は1等級(8万8千円)から32等級(65万円)までの32等級に分かれており、65万円が天井です。高収入の方でも厚生年金の保険料はこの天井で止まります。なお賞与にかかる標準賞与額は、1回の支給につき150万円が上限(同じ月に2回以上支給されたときは合算)です。
健康保険料率と介護保険料率は保険者(協会けんぽの各都道府県支部や健康保険組合)ごとに異なります。ご自身の率は、加入している保険者の公表する保険料額表でご確認ください。
出典と確認時点
この記事は2026年8月4日時点で、日本年金機構「定時決定(算定基礎届)」「厚生年金保険の保険料」「随時改定(月額変更届)」の公表内容を確認して整理した一般的な内容です。保険料を給与から控除するタイミング(翌月控除・当月控除)は事業所の取扱いによります。ご自身の標準報酬月額や控除額は、勤務先の給与規程および管轄の年金事務所にご確認ください。
要点の確認
- 定時決定で決め直した標準報酬月額は9月から翌年8月まで適用されます
- もとになるのは4月・5月・6月に支払われた報酬。残業手当・通勤手当・住宅手当も入ります
- 算定に使うのは支払基礎日数17日以上の月(特定適用事業所の短時間労働者は11日以上)
- 翌月控除の事業所なら、明細で額が動くのは10月支給分から
- 途中の改定は随時改定(2等級以上・4か月目から)と育休等終了時の改定(届出制・翌月から)
- 厚生年金保険料率は18.3%固定、標準報酬月額の上限は65万円(32等級)
9月・10月の明細が届いたら、健康保険と厚生年金の欄を8月分と並べて見てください。動いているなら理由は4〜6月にあります。動くはずなのに動いていない場合は、支払基礎日数か届出の扱いを確認する番です。
次に額が動くのは、随時改定がなければ来年9月分です。来年の算定基礎届の時期に、この記事の内容を確認できるよう更新します。
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