医療費控除は10万円を超えなくても使えます|所得200万円未満なら基準は「所得の5%」です

「うちは年間10万円もかかっていないから関係ない」——そう判断して集計をやめてしまう方は多いと思います。
ただ、国税庁のタックスアンサーNo.1120にある差し引き額は「10万円」だけではありません。その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5パーセントが基準になります。総所得150万円の方なら基準は7万5千円です。この記事では、その基準の読み方と、集計で損をしやすい急所を整理します。
💡 この記事の要点
・差し引く額は「10万円と総所得金額等の5%のうち低いほう」です
・保険金などの補てん額はその支給目的となった医療費からだけ差し引きます
・通院の電車・バス代は対象。自家用車のガソリン代・駐車場代は対象外
・領収書の提出は不要。ただし5年間の保管が求められます
1. 計算式——「10万円の壁」は正確な言い方ではありません
国税庁No.1120によると、医療費控除の額(最高200万円)は次のとおりです。
(実際に支払った医療費の合計額 − 保険金などで補てんされる金額)− 10万円
この末尾の「10万円」に注記が付いています。その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5パーセントの金額です。
パート収入の方や年金生活の方は、「10万円未満だから無理」と決める前に自分の基準額を出してみる価値があります。
なお、これは税額がその分そのまま戻る「税額控除」ではなく所得控除です。戻る金額の見当は「控除額 × 自分の所得税率」で付きます。
自分の基準額と控除額がいくらになるかは、3つの数字を入れれば出ます。自分の基準額と控除額を計算する
2. 対象になる費用・ならない費用
判断の軸は品目名ではなく、治療に必要な支出かどうかです。国税庁の公表内容から、迷いやすいものを挙げます。
- 通院の電車・バス代:対象です。一方、自家用車で通院したときのガソリン代や駐車場代は対象になりません(No.1128)
- 小さな子どもの通院に付添が必要なとき:付添人の交通費も通院費に含まれます(No.1128)。診察券などで通院日を確認できるようにし、金額も記録しておいてください
- 市販薬:かぜ薬など治療目的なら一般の医療費控除の対象。ビタミン剤など予防・健康増進が目的のものは対象外
- 歯科:自由診療や高価な材料を使った場合でも、一般的に支出される水準を著しく超えない部分は対象になり得ます。金やポーセレンを使った治療の対価は対象と示されています。一方、容ぼうを美化するための歯列矯正は対象外(成長期の子どもの不正咬合の矯正は対象になり得ます)
- 歯科ローン:信販会社が立替払をした金額は、その立替払をした年の医療費控除の対象。ただし金利・手数料相当分は対象外
3. 保険金・高額療養費の差し引き——ここが一番損をしやすい
差し引く補てん金には、生命保険の入院給付金、健康保険の高額療養費・家族療養費、出産育児一時金などが含まれます。
重要なのは、補てん金はその給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引くという点です。国税庁No.1120の注記は「引ききれない金額が生じた場合であっても他の医療費からは差し引きません」と明記しています。
たとえば入院費30万円に対して入院給付金が40万円出た場合、その入院費は差し引き後ゼロとして扱いますが、余った10万円を歯科代など別の医療費から引く必要はありません。ここを「全部の医療費から引く」と誤解すると、自分で控除額を削ることになります。
4. 家族の分も合算できます
本人だけでなく、自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費も合算できます(No.1120)。
- 同居していることが条件ではありません(仕送りしている下宿中の子どもなども対象になり得ます)
- ポイントは「納税者本人がその医療費を実際に支払ったこと」です
共働き世帯では、家族の医療費をまとめて所得の高いほうが支払って申告するほうが有利になりやすい、という設計の余地がここから生まれます。
5. 市販薬中心ならセルフメディケーション税制という選択肢
対象の市販薬(レシートに対象商品である旨の表示があります)をよく買う方には、医療費控除の特例があります。国税庁No.1129によると、平成29年1月1日から令和8年12月31日までの購入分が対象で、購入額のうち12,000円を超える部分(88,000円が限度)が控除額になります。
条件は、申告する本人がその年に健康診査・予防接種・がん検診などの「一定の取組」を行っていることです。取組に要した費用そのものは控除額に含められません。
⚠️ 一般の医療費控除との併用はできません
同じ年はどちらか一方の選択です。しかも国税庁No.1131は、いったん選択して申告した後は、更正の請求や修正申告で他方へ変更することはできないとしています。両方を計算し、有利なほうを決めてから提出してください。
対象商品の範囲や必要書類は、セルフメディケーション税制は市販薬が年12,000円超から——控除は最高88,000円で詳しく整理しています。
6. 申請の手順
- 年末調整では受けられないため、確定申告で申請します
- 領収書から「医療費控除の明細書」を作成して確定申告書に添付します(セルフメディケーション税制は別様式)
- 医療保険者から交付を受けた医療費通知がある場合は、それを添付することで明細書の記載を簡略化できます
- 領収書の提出は不要ですが、確定申告期限等から5年を経過する日まで、税務署から提示または提出を求められることがあります
⚠️ 医療費通知に載らないもの
医療費通知に反映されるのは保険診療の情報が中心です。自由診療・市販薬・通院交通費などは自分で追加する必要があります。捨ててよいレシートかどうかは、申告を済ませてから判断してください。
⚠️ 出典と確認時点
この記事は2026年8月4日時点で国税庁タックスアンサー(No.1120・No.1128・No.1129・No.1131)を確認して整理した一般的な内容です。個別の可否判断は税務署または税理士にご確認ください。
要点の確認
- 差し引く基準は「10万円と総所得金額等の5%の低いほう」——所得200万円未満なら10万円以下でも使えます
- 保険金はその給付の目的となった医療費からだけ差し引く。引きすぎは自分の損
- 通院の公共交通機関代は対象。ガソリン代・駐車場代は対象外
- 市販薬中心ならセルフメディケーション税制(12,000円超・限度88,000円、令和8年12月31日まで)。併用不可・あとから変更不可
- 領収書の提出は不要でも5年間の保管が必要
1月からできる準備は一つだけです。対象になるか迷うものも含めて、医療費のレシートをまず一か所に貯めておくこと。それだけで、翌年の判断材料がそろいます。
セルフメディケーション税制の適用期間は令和8年12月31日までとされています。2027年以降の扱いについて国税庁から発表があり次第、本記事を更新します。
あわせて読みたい
・医療費控除、去年の分はもう遅い?還付申告は5年さかのぼれます
・セルフメディケーション税制は市販薬が年12,000円超から|控除は最高88,000円
・高額療養費の申請には時効2年|多数回該当で4か月目から上限が下がる仕組み
コメント
コメントを投稿