退職後の国民年金、未納にすると障害年金まで消えます|失業した年は前年所得に関係なく免除を申請できます(さかのぼれるのは2年1か月)

会社を辞めると、国民年金の納付書が自宅に届きます。収入が止まっている時期に毎月の請求だけが来るので、いったん脇に置いてしまう方は少なくありません。ここで最初に浮かぶのは「払えないなら放っておくのと、何か手続きをするのとで、そんなに違うのか」だと思います。
違います。日本年金機構は、免除の承認を受けた期間について保険料を全額納付した場合の年金額の2分の1(税金分)を受け取れますとし、続けてこう書いています。手続きをせず未納となった場合、2分の1(税金分)は受け取れません。同じ「払っていない」でも、申請したかどうかで扱いが分かれます。そして、失業した方には前年所得にかかわらず免除・納付猶予を受けられる特例があります。
1. 「未納」と「免除」は、失ったものの大きさが違います
日本年金機構は、期間の扱いを4つに分けて整理しています。読み取れる差は次のとおりです。
- 納付:老齢基礎年金の受給資格期間に算入され、年金額にも反映され、障害基礎年金・遺族基礎年金の受給資格期間にも算入されます
- 全額免除・一部免除:受給資格期間に算入され、年金額にも反映され、障害・遺族の受給資格期間にも算入されます(一部免除は、減額された保険料を納付している必要があります)
- 納付猶予:受給資格期間と障害・遺族の受給資格期間には算入されますが、年金額への反映はありません
- 未納:受給資格期間に算入されず、年金額にも反映されず、障害基礎年金・遺族基礎年金の受給資格期間にも算入されません
この最後の行が、この記事でいちばん伝えたい部分です。未納は「将来の年金が少し減る」だけの話ではありません。いま何かが起きたときの保障が外れます。
機構の記載はこうです。未納のままにしておくと、病気やけがで障害や死亡といった不測の事態が発生したとき、障害基礎年金・遺族基礎年金を受け取ることができない場合があります。そして不慮の事故や病気が発生してから、過去にさかのぼって申請を行っても、障害基礎年金の保険料納付要件に算入されません。あとから払っても間に合わない、と明言されています。
支給されない具体例も挙げられています。障害の場合は「初診日の属する月」、死亡の場合は「死亡日の属する月」の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が3分の2未満の場合。あるいは、その前々月までの1年間に保険料の未納がある場合です。免除期間はここに含まれますが、未納は含まれません。
2. 失業した年は、前年の所得が審査から外れます
「去年は普通に働いていたから、所得の基準で落ちるだろう」という思い込みで申請をしない方がいます。ここに特例があります。
機構の説明では、失業・倒産・事業の廃止などの事実を確認できたときは、失業等した方の前年所得にかかわらず、免除・納付猶予を受けられる特例があります。退職した本人の前年所得は審査から外れるということです。
必要なのは、失業等の事実を確認できる書類です。
- 雇用保険の被保険者であった方:勤務先から交付される「雇用保険被保険者離職票」のコピー、またはハローワークから交付される「雇用保険受給資格者証」「雇用保険受給資格通知」のコピー など
- 事業の廃止(廃業)または休止の届出を行っている方:厚生労働省が実施する総合支援資金貸付の貸付決定通知書の写しおよびその申請時の添付書類の写し
- 上記を用意できない場合:履歴事項全部証明書または閉鎖事項全部証明書、税務署等への異動届出書、個人事業の開廃業等届出書または事業廃止届出書の写し。ただしこの場合は、別途「失業の状態にあること」の申し立てを書式で行う必要があります
2年目の申請で書類を出し直す必要があるかも書かれています。過去に同一の失業等の事由により免除・納付猶予を申請し、失業等の事実が確認できる書類を添付したことがある場合は、あらためて添付する必要はありません。同じ離職を理由に継続して申請する場合、離職票のコピーは初回だけで足ります。
なお、この特例は本人の所得を外すものです。免除の審査は本人・配偶者・世帯主の所得を見る仕組みなので、同居する家族の所得によっては承認されないことがあります。
3. 所得の基準は「式」で決まっています
失業していない場合や、家族の所得も見る場合に関わってくるのが承認基準です。前年所得が次の式で計算した金額の範囲内であることが条件になります。
- 全額免除:(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円
- 4分の3免除:88万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
- 半額免除:128万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
- 4分の1免除:168万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
- 納付猶予制度:(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円
留意点として、地方税法に定める障害者、寡婦またはひとり親の場合は基準額が変わるとされています。
免除には全額、4分の3、半額、4分の1の4種類があります。一部免除の場合は、残った分の保険料を納める必要があり、それを納めていないと免除の効果が得られません。令和8年度に実際に納める額として、機構は4分の3免除で4,480円、半額免除で8,960円、4分の1免除で13,440円と示しています。
納付猶予は、20歳以上50歳未満の方が対象で、本人・配偶者の前年所得が基準内の場合に承認されます。受給資格期間にはカウントされますが、年金額には反映されません。免除と猶予は、名前が近いわりに結果が違います。
4. さかのぼれるのは2年1か月です
「もう何か月か放置してしまった」という場合でも、締切前なら間に合います。機構の記載では、申請できる期間は保険料の納付期限から2年を経過していない期間(申請時点から2年1カ月前までの期間)です。
逆に言えば、2年を過ぎた月は申請できません。未納として固定されます。障害・遺族の要件に響くのはこの部分なので、思い出した時点で動く価値があります。
そして、あとから納め直す道も用意されています。免除・納付猶予の承認を受けた期間の保険料は、10年以内であれば申し出により後から納付(追納)して、老齢基礎年金の受給額を満額に近づけることができます。未納のまま2年が過ぎた月にはこの追納の道がありません。免除を取っておくことは、将来の選択肢を残す行為でもあります。
5. 金額で見るとどのくらいの差になるのか
機構は、1年で受け取れる年金額のめやすを示しています(昭和31年4月2日以後生まれの方の金額)。
- 老齢基礎年金:40年納付した場合 847,300円
- 老齢基礎年金:40年全額免除となった場合(国庫負担2分の1で算出した場合) 423,650円
- 障害基礎年金:1級 1,059,125円/2級 847,300円
- 遺族基礎年金:子(1人)がある配偶者 1,091,100円
老齢基礎年金の側だけを見ると、全額免除と全額納付の差が年40万円台という話に見えます。ただ、比べるべき相手は「未納」です。未納の期間は年金額に反映されないうえ、受給資格期間にも入りません。老齢基礎年金を受け取るには、保険料納付済期間(厚生年金保険や共済組合等の加入期間を含む)と保険料免除期間などを合算した期間が10年以上必要とされており、未納はこの10年の計算にも寄与しません。
そして障害基礎年金は、1級で年1,059,125円、2級で年847,300円です。未納が理由でこれが受け取れない状態になるかどうかは、書類を1枚出したかどうかで分かれます。差の大きさはここに出ます。
6. 自分がどの制度に行くべきかを先に見分けます
今回扱った免除・納付猶予には、対象外となる方がいます。機構は次のように振り分けています。
- 学生の方:学生納付特例制度
- 生活保護の「生活扶助」を受けている方、障害年金を受けている方:法定免除制度
- 出産を予定している方・出産した方:産前産後期間の免除制度
該当する場合は、そちらの手続きが正しい入口になります。当てはまらない一般の退職者・自営業者が、この記事で扱った免除・納付猶予の対象です。
やることは多くありません。離職票(またはハローワークから交付された受給資格者証・受給資格通知)のコピーを用意し、日本年金機構の案内に沿って申請書を提出する。それだけで、前年の所得は審査から外れます。承認されれば、その期間は障害・遺族の受給資格期間に算入されたままになります。
出典と確認時点
この記事は2026年8月4日時点で、日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」(更新日:2026年8月3日)の公表内容を確認して整理した一般的な内容です。承認の可否、必要書類、提出方法の個別の取扱いについては、日本年金機構および市区町村の国民年金担当窓口にご確認ください。
要点の確認
- 未納は老齢基礎年金の受給資格期間にも年金額にも反映されず、障害基礎年金・遺族基礎年金の受給資格期間にも算入されない
- 全額免除なら、全額納付した場合の年金額の2分の1(税金分)が反映される。手続きをしなければこの2分の1も受け取れない
- 失業・倒産・事業の廃止の事実を確認できれば、本人の前年所得にかかわらず免除・納付猶予を申請できる
- 必要書類は離職票のコピー、または受給資格者証・受給資格通知のコピーなど。同一事由の継続申請では再添付は不要
- 申請できるのは納付期限から2年を経過していない期間(申請時点から2年1か月前まで)
- 承認された期間は10年以内なら追納できる。未納で2年を過ぎた月にはこの道がない
- 障害基礎年金は1級1,059,125円・2級847,300円(年額のめやす)。未納はこの給付の要件に響く
- 学生・生活扶助受給者・障害年金受給者・出産前後の方は別の制度が入口になる
退職の手続きは雇用保険と健康保険に目が向きがちですが、国民年金は「申請したかどうか」だけで結果が変わる数少ない場面です。納付書が届いた週に、離職票を同じ封筒に入れておくところから始められます。
令和8年度の金額や承認基準は今後の改定で変わることがあります。変更が公表され次第、本記事の数値を更新します。
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