サーキュレーター併用で電気代が下がるという実測データは、公式に見つかりませんでした|書けるのは消費電力38Wの上乗せと、冷房を1℃上げたときの年30.24kWh・約940円だけです

「サーキュレーターをエアコンと一緒に使うと電気代が下がる」。よく見かける話です。では何%下がるのか、その数字はどこから来ているのか。メーカーと国の公式ページを順にたどってみました。
結論から書きます。サーキュレーターを併用したことで消費電力が何%減った、という実測データは、今回の調査では公式ページに見つけられませんでした。よく引用される「1℃で10%」も、メーカー自身のページで「といわれています」「とされています」という伝聞の形で書かれています。自社の実測値として出しているわけではありません。
そのかわり、はっきりした数字が2つあります。資源エネルギー庁が公表している、冷房の設定温度を1℃上げたときの年間30.24kWh・約940円。そしてサーキュレーター側が使う電力、38Wです。判断材料はこの2つで足ります。
1. 「1℃で10%」の出どころをたどると、伝聞でした
まず、いちばん有名な数字から。ダイキン工業の公式ページには、サーキュレーターの解説とあわせてこう書かれています。「エアコンの温度設定を1℃上げれば10%の節電になるといわれています。」
別のページでも同じ形です。「設定温度を1℃下げると約10%の節電になるとされています」。どちらも「といわれています」「とされています」で終わっていて、同社が実験して出した値だとは書かれていません。
資源エネルギー庁側も探しました。よく見かける「冷房を1℃上げると約13%」という表現は、同庁の公式ページに見つけられませんでした。同庁が出しているのは%ではなく、kWhと円の実額です。
なお同庁のエアコンのページは、通常の取得方法では読めない状態でした(自動アクセスを弾く仕組みが働いていました)。本稿で引用したのは、2026年6月25日時点で保存された公式ページの内容です。
2. 国が出しているのは、kWhと円です
資源エネルギー庁の省エネポータルには、条件つきの試算が載っています。原文の条件をそのまま書きます。
冷房:「外気温度31℃の時、エアコン(2.2kW)の冷房設定温度を27℃から1℃上げた場合(使用時間:9時間/日)」。この場合、年間で電気30.24kWhの省エネ、原油換算7.62L、CO2削減14.8kg、金額にして約940円の節約とされています。
暖房:「外気温度6℃の時、エアコン(2.2kW)の暖房設定温度を21℃から20℃にした場合(使用時間:9時間/日)」。年間で電気53.08kWh、原油換算13.38L、CO2削減25.9kg、約1,650円です。暖房のほうが倍近く効きます。
金額の裏側も公表されています。電気単価は31円/kWh(令和4年7月、全国家庭電気製品公正取引協議会の新電力料金目安単価・税込)、冷房期間は3.6か月・112日、暖房期間は5.5か月・169日という前提です。出典は「省エネ性能カタログ2015年夏版」および「家庭の省エネ大事典2012年版」とされています。
ここが重要です。この940円は「サーキュレーターを使った場合」の数字ではありません。単に設定温度を1℃動かしたときの数字です。サーキュレーターは、この1℃を我慢しやすくするための道具、という位置づけになります。
同じ資源エネルギー庁の資料からは、冷蔵庫では容量と年間消費電力量が素直に比例しないことも読み取れます。省エネ性能カタログで401〜450Lの平均が351〜400Lより小さいという冷蔵庫の逆転
3. メーカーの実測は、電気代ではなく温度でした
ダイキンの公式ページには、実験の記録が残っています。条件はかなり細かく書かれています。試験実施日2011年12月16日、12時から18時、外気温平均10℃、運転前の室温約12℃、暖房設定温度25℃、6畳・鉄筋コンクリート造・西向き、晴・日射量0.99MJ/m2。
結果はこうです。「暖房だけでは…足元付近の温度が約2℃も低くなりました。」そして空気を混ぜると、「足元近の温度が約2℃上がり、上下の温度差も小さくなりました。」。比較として、「設定温度を2℃上げると、足元付近の温度は約1℃上昇しましたが、空気清浄機を使ったときほどは上がりませんでした。」とも書かれています。
ここで一つ、正確に伝えておくべきことがあります。この実験の注記には「※空気循環を促す機器として空気清浄機を使用しました。」とあります。サーキュレーターではありません。空気を動かす機器という点では近いものの、同じ機器での実測ではない、というのが実際のところです。
そして測っているのは温度であって、電気代ではありません。「足元が2℃上がった」は、「電気代が下がった」とは別のことです。
4. 上乗せ分は38W。ここは自分で計算できます
サーキュレーター側の数字は、はっきりしています。アイリスオーヤマの公式取扱説明書には、PCF-SC15Tの仕様として消費電力38/36W(上下・左右首ふり時)、適用床面積の目安18畳、電源AC100V、寸法は幅210×奥行210×高さ290mm、質量2.0kgと記載されています。「※商品の仕様は予告なく変更することがあります。」という但し書きも付いています。
なお、同社の製品ページのスペック表は画面上で生成される形式で数値を読み取れず、38Wの根拠はこの取扱説明書PDFのみです。三菱電機やパナソニックのサーキュレーターの型番別の消費電力は取得できなかったため、本稿では扱いません。
あとは自分の使い方に当てはめるだけです。エアコンと同じく1日9時間、冷房期間の112日動かすなら、38W×9時間×112日=38,304Wh=約38.3kWh。国の試算と同じ31円/kWhで換算すると約1,187円です。1℃上げて浮く約940円と、ほぼ同じ桁になります。
つまり、1℃ぶんで釣り合うかどうかは微妙だということです。2℃動かせるなら上回り、1℃も動かせないなら下回る。この線の引き方が、公式の数字から言えるいちばん確かなところです。
5. 買う前に1日試すこと
1つ目を先に置いているのは、そこが全部の前提だからです。設定温度が動かないなら、サーキュレーターの分だけ上乗せになります。逆に、風があるおかげで2℃動かせるなら、計算は反転します。
用途として、ダイキンの公式ページには使い分けの説明もあります。「「風を送る」「空気を混ぜる」ことが目的の場合は、扇風機よりも風がより遠くの届くサーキュレーターのほうが適しています。」。同社は運転方法についても「エアコンの設定温度を下げるよりも、エアコンの風量を強くする方が使う電気代が少なくなるのでおすすめです。また、扇風機を一緒に使うことでも同じ効果が得られます。」と書いています。
本稿では、同社が公表している「節電術ありの部屋となしの部屋で21.8%」という数値は使いませんでした。同じページに、想定した条件(外気35℃・設定28℃)と実際の試験条件(外気25℃・設定18℃)がずれていることが公式に明記されているためです。条件がずれていると公式が書いている数字を、節電率として持ち出すことはしません。
出典と確認時点
この記事は2026年8月17日時点で、資源エネルギー庁 省エネポータルのエアコンのページ(2026年6月25日時点の保存版)および「無理のない省エネ節約」ページ、ダイキン工業の公式検証ページ3件、アイリスオーヤマの公式取扱説明書PDFを取得して整理した一般的な内容です。サーキュレーターの併用によって消費電力が何%減るかを示す一次実測データは、今回の調査では確認できませんでした。ダイキンの冬の検証は空気循環の機器として空気清浄機を用いたもので、測定対象は電気代ではなく温度です。「1℃で10%の節電」はメーカーも伝聞の形で記載しています。「冷房1℃で約13%」という表現は資源エネルギー庁の公式ページに確認できませんでした。消費電力38Wはアイリスオーヤマ PCF-SC15T の公式取扱説明書の値で、他社・他機種は取得できていません。試算の前提と単価は改定されます。購入時点の仕様は各メーカーの公式資料でご確認ください。
要点の確認
- サーキュレーター併用による節電率の一次実測データは確認できなかった
- 「1℃で10%の節電」はメーカーも「といわれています」「とされています」と伝聞で記載
- 「冷房1℃で約13%」という表現は資源エネルギー庁の公式ページに見つからなかった
- 国の試算は冷房27℃から1℃上げて年30.24kWh・約940円(外気31℃・2.2kW・9時間/日)
- 暖房は21℃から20℃で年53.08kWh・約1,650円と、冷房より効きが大きい
- 前提は31円/kWh・冷房112日・暖房169日
- アイリスオーヤマ PCF-SC15T の消費電力は38/36W、適用床面積の目安は18畳
- 同じ条件で回すと約38.3kWh・約1,187円の上乗せ、つまり1℃分とほぼ同じ桁
- ダイキンの実測は足元の温度が約2℃上がったという温度の話で、使ったのは空気清浄機
設定温度を1℃動かして1日過ごせるかを試す。上乗せの38Wと940円を並べれば、答えはそこで出ます。
公式の試算と仕様は改定されます。新しい実測データの公表が確認でき次第、本記事も見直します。
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