年金に上乗せされる月5,620円、請求書を出さないと1円も入りません|65歳以上・世帯全員が住民税非課税で年金収入809,000円以下

年金に上乗せがあると聞いても、まず頭をよぎるのは「どうせ自分は対象外だろう」だと思います。線引きが分からないまま、届いた封筒を置いたままにしてしまう方も少なくありません。
制度の名前は年金生活者支援給付金です。老齢の場合の基準額は月5,620円で、保険料を480月すべて納付していればこの満額、納付済期間が短ければその割合で減ります。対象は65歳以上で老齢基礎年金を受けている方のうち、世帯全員の市町村民税が非課税で、前年の年金収入とその他の所得の合計が809,000円以下(昭和31年4月2日以後生まれの場合)の方です。そして重要なのは、請求書を出さない限り1円も振り込まれないことです。
この記事の要点
・老齢の給付額=5,620円×納付済期間÷480月+11,768円×免除期間÷480月(月額)
・要件は65歳以上・世帯全員が市町村民税非課税・前年の年金収入等の合計が809,000円以下(昭和31年4月2日以後生まれ)
・809,000円を少し超えても909,000円以下なら「補足的」の対象
・受け取るには請求書の提出が必須。原則請求した月の翌月分から
・支払いは偶数月の中旬に2か月分、年金とは別途振り込まれます
・所得判定に障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれません
1. 対象かどうかは3つの条件で決まります
老齢年金生活者支援給付金の支給要件は、次の3つをすべて満たすことです。ひとつでも欠けると支給されません。
- 65歳以上で、老齢基礎年金を受けていること(請求書は65歳になる誕生日の前日以降に提出します)
- 請求する方の世帯全員の市町村民税が非課税であること
- 前年の年金収入金額とその他の所得の合計が、809,000円以下であること(昭和31年4月2日以後生まれの方の場合)
3つ目の基準額は生年月日で分かれています。昭和31年4月1日以前生まれの方は806,700円以下です。数千円の差ですが、境目にいる方には効きます。
見落とされがちなのが2つ目の「世帯全員」です。ご本人の所得が低くても、同じ世帯に課税されている家族がいれば対象になりません。逆に言えば、世帯の状況が変わった年は判定も変わります。
そして所得の数え方にも決まりがあります。判定に使う年金収入金額には、障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれません。遺族年金を受け取っているから対象外だと思い込んで確認していない方は、ここを読み直す価値があります。
2. いくら入るか——5,620円は「480月納めた人」の額です
老齢年金生活者支援給付金の額は、次の(1)と(2)の合計です。
- (1) 保険料納付済期間に基づく額(月額)=5,620円 × 保険料納付済期間 ÷ 480月
- (2) 保険料免除期間に基づく額(月額)=11,768円 × 保険料免除期間 ÷ 480月
(2)の単価は免除の種類で変わります。昭和31年4月2日以後生まれの方の場合、全額免除・4分の3免除・半額免除の期間は11,768円(老齢基礎年金満額(月額)の6分の1)、4分の1免除の期間は5,884円(同12分の1)です。昭和31年4月1日以前生まれの方は、それぞれ11,734円・5,867円となります。
公式に示されている計算例を引くと、納付済月数240か月・全額免除月数60か月の方は次のようになります。
- 5,620円 × 240 ÷ 480月 = 2,810円
- 11,768円 × 60 ÷ 480月 = 1,471円
- 合計 4,281円(月額)
この計算で目を引くのは、免除期間の単価が納付済期間の単価より高いことです。保険料を免除された期間は老齢基礎年金の額としては目減りしますが、この給付金では厚めに評価される設計になっています。「免除ばかりだったから期待できない」と決めつける前に、年金証書や支給額変更通知書で自分の納付済期間・免除期間を確認してください。
なお、計算結果に50銭未満の端数が生じたときは切り捨て、50銭以上1円未満は1円に切り上げて計算されます。
3. 809,000円を超えても、909,000円までは受け取れます
基準額をわずかに超えた途端にゼロになると、働いた分だけ損をする逆転が起きます。それを避けるために補足的老齢年金生活者支援給付金が用意されています。
昭和31年4月2日以後生まれの方であれば、前年の年金収入等の合計が809,000円を超え909,000円以下の範囲が対象です(昭和31年4月1日以前生まれの方は806,700円超〜906,700円以下)。額は次の式で計算されます。
- 5,620円 × 保険料納付済期間 ÷ 480月 × 調整支給率
- 調整支給率=(909,000円 - 前年の年金収入金額とその他の所得の合計)÷ 100,000円(昭和31年4月1日以前生まれの方は909,000円の代わりに906,700円)
所得が基準額に近いほど調整支給率は1に近づき、909,000円に近づくほど0に近づきます。段差ではなく坂になっている、という構造です。「1万円超えたからもう関係ない」と判断してしまうのが、この制度で最も多い取りこぼしの形です。
4. 請求書を出さないと1円も入りません
ここがこの制度の最大の落とし穴です。要件を満たしていても、年金生活者支援給付金請求書を提出しない限り支給されません。年金の振込口座を届け出てあっても、自動的に上乗せされることはありません。
流れは次のとおりです。
- 請求書を提出する
- 提出から1〜2か月後に「年金生活者支援給付金 支給決定通知書」が届く
- 初回支払月の上旬に振込通知書が届き、記載の額が支給される
- 以後の支払いは原則偶数月の中旬に2か月分(前月および前々月)。たとえば10月分と11月分は12月中旬
- 振込先は年金と同じ受取口座だが、年金とは別途支払われる
そして決定的なのが、原則として請求した月の翌月分からの支払いになるという点です。要件を満たしていた過去の月にさかのぼって受け取れるわけではありません。手続きを3か月遅らせれば、その3か月分は戻ってきません。満額に近い方なら、1か月あたり5,620円が消える計算です。
新たに対象となる可能性がある方には、日本年金機構からはがき型の請求書が送られます。公式のお知らせ一覧には、令和7年度分について2025年9月1日付で「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)の送付について」が掲載されており、例年9月ごろに送付される流れです。2026年分の送付時期は、日本年金機構のお知らせ一覧でご確認ください。届いたはがきは、年金関係の郵便に紛れて放置されやすいものの筆頭です。
5. 支給されなくなる事由と、額が動く仕組み
受給を始めたあとも、次のいずれかに該当すると支給されません。
- 日本国内に住所がないとき(届出が必要)
- 年金が全額支給停止のとき
- 刑事施設等に拘禁されているとき(届出が必要)
また給付額は毎年度、物価の変動による改定(物価スライド改定)があります。改定されたときは「年金生活者支援給付金 支給金額(改定)通知書」が送られます。この記事に載せた5,620円・11,768円といった額も、年度が変われば動きます。年度替わりに届く通知書は捨てずに保管してください。
なお、障害年金・遺族年金を受けている方向けの給付金も別に定められており、要件と額は老齢とは別のページに整理されています。ご自身が受けている年金の種類に対応するものを確認する順番になります。
6. 「給付金の手続き」を名乗る電話には応じないでください
日本年金機構は、この給付金に関して注意を呼びかけています。日本年金機構や厚生労働省から、電話で家族構成や金融機関の口座番号・暗証番号を聞くことはなく、手数料などの金銭を求めることもありません。
手続きのために現金やキャッシュカードを準備するよう促す連絡は、制度の運用と噛み合いません。不審に感じたときは、最寄りの年金事務所か警察相談専用電話(#9110)へ。給付金そのものの問い合わせは、給付金専用ダイヤル(ナビダイヤル)0570-05-4092です。
出典と確認時点
この記事は2026年8月4日時点で、日本年金機構「年金生活者支援給付金」および「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」の公表内容を確認して整理した一般的な内容です。給付額は毎年度の物価スライド改定により変動します。はがき型請求書の送付時期は年度ごとに公表されるため、日本年金機構のお知らせ一覧でご確認ください。ご自身が対象となるかの判定は、年金事務所または給付金専用ダイヤルへお問い合わせください。
要点の確認
- 要件は65歳以上・世帯全員が市町村民税非課税・前年の年金収入等が809,000円以下(昭和31年4月2日以後生まれ)の3つすべて
- 額は5,620円×納付済期間÷480月+11,768円×免除期間÷480月
- 基準額超でも909,000円以下なら補足的老齢の対象(調整支給率で逓減)
- 所得判定に障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれません
- 請求書の提出が必須。原則請求した月の翌月分からで、さかのぼりません
- 支払いは偶数月の中旬に2か月分、年金とは別に振り込まれます
年金証書を出して、納付済期間と免除期間の月数を書き出すところから始めてください。そこに5,620円と11,768円を当てはめれば、自分の額はその場で分かります。
給付額は毎年度の物価スライドで改定されます。次年度の額が公表され次第、本記事の金額を更新します。
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