韓国の食堂の壁にある産地の表示は、店の親切ではなく法律上の義務です|偽れば7年以下の懲役か1億ウォン以下の罰金、2025年10月1日からヤギ肉・ブリ・ホタテも対象に加わりました

韓国の食堂に入ると、壁やメニューの端に、材料の産地を並べた表示があります。日本の飲食店ではあまり見かけないので、こだわりの店が自主的に書いているものだと受け取られがちです。
実際は逆で、これは法律が書かせているものです。韓国の「農水産物の原産地表示等に関する法律」第5条第3項が、一定の飲食店に対して原産地の表示を義務づけています。しかも罰は軽くありません。第14条第1項は、偽った表示や産地の偽装について7年以下の懲役や1億ウォン以下の罰金に処するか、これを併科することができると定めています。
1. 表示させられているのは、どんな店か
すべての飲食店が対象というわけではありません。範囲は施行令第4条が指定しています。同条は、食品衛生法施行令に定める休憩飲食店営業、一般飲食店営業、委託給食営業を行う営業所と、集団給食所を設置・運営する者を挙げています。
旅行者が入るような食堂やカフェの多くは、このどれかに当たります。学校や会社の食堂も、集団給食所として同じ義務を負う形です。
法第5条第3項は、調理して販売・提供する場合と、そのために保管または陳列する場合の両方を対象にしています。かっこ書きで配達による販売・提供を含むとされているので、店内に限らず、出前で受け取る料理にも表示は付いてきます。
2. 対象になる食べ物は、法律で一つずつ並べられています
何にでも表示が付くわけでもありません。施行令第3条第5項が品目を列挙しており、そこに載っているものだけが義務の対象です。現行の施行令は2025年10月1日から施行されている版で、対象は次のように並んでいます。
- 牛肉・豚肉・鶏肉・アヒル肉・羊肉・ヤギの肉(いずれも食肉、包装肉、食肉加工品を含む)
- ご飯・粥・おこげに使う米(もち米、玄米、蒸し米、米加工品を含む)
- 白菜キムチの原料である白菜と唐辛子粉
- 豆腐類・おから・豆の麺に使う大豆(加工豆腐と湯葉は除く)
- ヒラメ、マダイ、ウナギ、サバ、タチウオ、イカ、ワタリガニ、マグロ、アンコウ、ホタテ、アワビ、ブリなどの水産物(該当する水産物加工品を含む)
- 調理して出すために水槽などに保管・陳列している生きた水産物
焼肉、参鶏湯、キムチ、豆腐チゲ、刺身。旅行者が食べるものの多くが、この一覧のどこかに引っかかります。逆にいえば、一覧にない食材については表示の義務がありません。施行令第3条第7項は、対象外の食材でも表示基準と表示方法を守れば任意に表示できるとしているので、書かれていない食材の産地は「不明」ではなく「義務の外」だと読むほうが正確です。
なお、加工品については第3条第6項が主原料を表示しなければならないとしています。
3. 牛肉だけ、表示が二段になっています
ここが、知っていると見え方が変わるところです。
法第5条第3項は原産地の表示を求めたうえで、かっこ書きで牛肉は食肉の種類を含むとし、さらに但し書きで牛肉の場合には食肉の種類を別途表示しなければならないと念を押しています。つまり牛肉だけは、どこから来たかに加えて、どういう牛かまで書かせる仕組みになっています。
焼肉店で、同じ「牛」の表示なのに一皿の値段が大きく違うことがあります。その差の一部は、この二段目の表示に現れています。日本語のメニューには産地の欄が省かれていることもあるので、値段の理由を知りたいときは、韓国語のメニューか壁の表示のほうを見ることになります。
なお、具体的な種類の区分名は施行規則の別表で定められています。本稿ではその別表を取得していないため、区分名の一覧は挙げません。
4. 「偽る」と「表示しない」は、別々に罰せられます
この法律は、二つの違反を分けて扱っています。
一つは、表示そのものをしなかった場合です。法第18条第1項第1号が、第5条第1項・第3項に違反して原産地を表示しなかった者に1千万ウォン以下の過料を科すとしています。同項第2号は、共同部令で定める表示方法に違反した場合も同じ過料の対象としています。
もう一つは、偽った場合です。法第6条第2項が、調理して販売・提供する者について、偽りや混同させるおそれのある表示、原産地の偽装、そして原産地表示をした農水産物等に原産地の異なる同一の農水産物等を混合して調理・販売・提供する行為を禁じています。国産と輸入品を混ぜて出す、という形も名指しで禁止されているわけです。
これに違反したときが第14条第1項の7年以下の懲役や1億ウォン以下の罰金で、しかもこれを併科することができるとされています。さらに第14条第2項は、刑が確定してから5年以内に再び違反した場合として1年以上10年以下の懲役または500万ウォン以上1億5千万ウォン以下の罰金という重い枠を置いています。
5. 罰金だけでは終わらない仕掛けがあります
金額以外の圧力も組まれています。
第9条第1項は、行政庁が表示の履行・変更・削除等の是正命令や違反した農水産物等の取引行為の禁止を命じることができるとしています。この処分を履行しなければ、第16条により1年以下の懲役や1千万ウォン以下の罰金です。
第9条第2項は公表を定めています。第5条違反を2年以内に2回以上したとき、または第6条違反で処分が確定したときは、処分に関する事項を公表しなければならないとされ、第4項が公表先として農林畜産食品部、海洋水産部、関税庁、国立農産物品質管理院、自治体、韓国消費者院などのホームページを挙げています。店名が並ぶ形です。
繰り返した場合には金銭の面でも上乗せがあります。第6条の2第1項は、第6条第1項または第2項を2年以内に2回以上違反した者に、その違反金額の5倍以下に該当する金額を課徴金として賦課・徴収することができるとしています。
一方で、自ら申し出た場合の道も用意されています。第16条の2は、違反した者が自らその事実を自首したときはその刑を減軽または免除するとしています。第17条の両罰規定により、従業員が違反すれば法人や事業主にも罰金刑が科されますが、相当の注意と監督を怠らなかった場合は除かれます。
6. 旅行者としては、どこを見ればいいか
難しい読み方は要りません。壁かメニューの端に貼られた一覧を探し、自分が頼むものの行を見る。それだけで、その皿の主な材料がどこから来たかは店に書かせてあります。
そのうえで、二つだけ覚えておくと見え方が変わります。牛肉は産地と種類の二段で書かれていること。そして、白菜キムチは白菜と唐辛子粉が別々に対象になっていることです。同じキムチでも、材料ごとに産地が分かれて書かれている店があるのはこのためです。
表示が見当たらない食材があっても、店が隠しているとは限りません。施行令第3条第5項の一覧に載っていない食材は、そもそも義務の外だからです。
出典と確認時点
この記事は2026年8月5日時点で、韓国の「農水産物の原産地表示等に関する法律」(法律第18525号/施行日2022年1月1日)と同法施行令(施行日2025年10月1日)を、韓国・国家法令情報センターの法令APIで取得して整理した一般的な内容です。条文の日本語は当ラボによる要約・訳であり、公式訳ではありません。表示方法の細目(施行規則)、牛肉の食肉の種類の区分名、過料の実際の賦課額については、本稿では確認していません。個別の事案については韓国の所管官庁の案内をご確認ください。法令および公表内容は改正・更新されることがあります。
食堂の壁の表示と同じように、街の両替所も、法令が業者の枠と業務の範囲を決めています。明洞の両替所と銀行は法令上は別の業者という区分
要点の確認
- 韓国の飲食店の産地表示は法律上の義務(農水産物の原産地表示等に関する法律 第5条第3項)
- 対象は休憩飲食店営業・一般飲食店営業・委託給食営業・集団給食所(施行令第4条)。配達による提供も含む
- 対象品目は施行令第3条第5項の列挙。牛・豚・鶏・アヒル・羊・ヤギの肉、ご飯や粥の米、白菜キムチの白菜と唐辛子粉、豆腐類などの大豆、指定された水産物、生きた水産物
- 牛肉だけは、原産地に加えて食肉の種類を別途表示させる(第5条第3項但し書き)
- 表示しなければ1千万ウォン以下の過料(第18条第1項第1号)
- 偽り・偽装・原産地の異なる同一品の混合は7年以下の懲役や1億ウォン以下の罰金、併科も可(第14条第1項)。5年以内の再違反は1年以上10年以下の懲役など(同条第2項)
- 是正命令に従わなければ1年以下の懲役や1千万ウォン以下の罰金(第16条)。処分は官庁のホームページで公表(第9条第2項・第4項)
- 2年以内に2回以上の違反には違反金額の5倍以下の課徴金(第6条の2第1項)。自首すれば刑の減軽または免除(第16条の2)
- 現行の施行令は2025年10月1日施行の版で、対象品目にヤギの肉、ホタテ、アワビ、ブリなども含まれている
壁の一覧を一度見る。牛肉なら二段目まで見る。それだけで、同じ料理の値段の差がどこから来ているのかが、少し読めるようになります。
施行令の対象品目は改正で追加されることがあります。次の改正が確認でき次第、本記事の一覧も見直します。
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